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ディープラーニングを活用した医療機器が承認されるまでの道のり (後編)

EIRL Editor
Oct 5 2020

本記事は、2020年5月に開催された「第79回 日本医学放射線学会総会」の共催セミナーにて、慶應義塾大学/医学部放射線診断科 特任助教 橋本 正弘 医師と、エルピクセル代表取締役 島原佑基とエンジニア ショパン・アントワンとの対談をまとめたものです。

医師のワークフローにフィットする医療AIを目指して

橋本
製品開発に携われたショパンさんに伺いますが、EIRLBrain aneurysmを設計する時に気をつけたこと、工夫したことを教えていただけないでしょうか?


ショパン
EIRL事業本部 製品開発リーダーのショパンと申します。
どんなに良いアルゴリズムを作っても、結局使っていただくためには臨床のワークフローにフィットさせていかなければならないと思ってます。読影のワークフロー、放射線科の先生方が使っていらっしゃるツールなどエコシステムは既存のものがあり、その中でうまく入り込むよう工夫をしています。具体的にはビューワーに依存しないよう、既存の読影ビューワーで使っていただけるようなファーストステップをとりました。また、DICOMでデータを送って頂きDICOMで結果を戻し、それをどのPACSでも integration できるように設定しています。


橋本
ありがとうございます。日本だと例えば撮影の指示、放射線科医が検査の前にこの人は造影しましょうねとか、この人はダイナミックしましょうとか、MRIであればこの人はMRAいりますよとか、MRAなくて良いですよとか、そういう指示を出すと思いますが、標準的なプロトコールは無いと思うのです。これは、日本独自の文化だと思います。レポーティングについても、レポートシステムがビューワーと別というのはそんなに多くはないと思っています。その辺も日本の文化かもしれません。

医療AI EIRL、技術開発の裏側

橋本
今、販売されてるEIRL Brain aneurysm なんですけれども、ResNetを使っていると伺いました。なぜResNetを使っているのでしょうか。


ショパン
MRIは3Dで解析をしており小さい3Dのパッチを入力して利用してるので、スクラッチで学習できるアーキテクチャーとしてResNetを採用しました。


橋本
開発されていた時期に世の中で流行っていたので、ちょっと使ってみたら結構良かった、みたいな感じなんでしょうか。


ショパン
はい、そうですね。当時、それが結構盛んだったというのもありますね。


橋本
そうですね。懐かしいですね。現在では違う技術を使っていたりとか、次のバージョンでは違う技術を使っていたりとか、可能性としてはあるのでしょうか。


ショパン
そうですね。今、異なるモデルを検討しているところです。まだ開発中ではありますが、新しいアーキテクチャを色々と挑戦しています。


橋本
なるほど、ありがとうございます。今後を楽しみにしております。ちなみに、どういった環境で計算しているのか皆さん気になっていると思うのですが、具体的にどんなマシンをお使いなのか伺っても宜しいでしょうか。


ショパン
社内でもGPUマシンを設置してまして、後は共同研究先でもGPUマシンを置いて計算を走らせています。スペックをあげ、メモリを増やし、少しずつ設備を増やしています。


橋本
もう少しお伺いさせてください。開発では、ハイパーパラメータだけではなくモデルもサーチされるということで結構時間がかかってるのでしょうか。


ショパン
そうですね。当初のモデルで試行錯誤を繰り返しながら学習を進めてきたので正確には言えない部分もありますが、おそらく一ヶ月ぐらいの計算時間はかかっていますね。、最近はもっと新しいアーキテクチャーで、パラメーターのチューニングだけではなく、モデルのリサーチを行なっているので、3か月以上かかっている状況です。


橋本
ありがとうございます。結構、いろいろ聞いて大丈夫なんですね。EIRLを開発していくうえでたくさんの壁があったと思いますが、一番大きな壁は何だったのか、そしてそれをどうやってクリアしてきたのかというのを教えていただきたいです。

苦戦した「モダリティ差異」と「薬事承認」

ショパン
壁はいっぱいありましたし、まだ乗り換えてない壁もあるかと思うのですが、振り返ってみると、モダリティの難しさ、と言いますか。最初は本当に限られたデータ数でスタートしましたが、撮影条件、データの質、ノイズ、解像度、モダリティによる差に苦戦してました。今でもその壁は完全には乗り越えていない認識ですが、地道な作業ではあるんですけども、データを増やしていけば良くしていくことができると。機械学習の良い点でもありますね。
もう1つは、全然違う観点で、技術ではなく薬事承認の取得です。データ解析だとかファクトで承認を取得するので、効果効能を示すためのデータ集め、そこに到るまでのプロトコルなど色々と勉強しながらやってきました。薬事取得のために読影試験、なんと2回も実施しました。 


橋本
2回も・・・。これは成績が悪かったから追試を受けるというものではなかったということですか。


ショパン
1回目でも良い結果は出ていましたが、ちゃんとステップを踏んでというところですね。プロトコルの細かい所を確認してからやってくださいという指示があり、やり直したという経緯です。


橋本
よくわかりました。ところで、既に導入されてる施設があると伺っていますが、導入時に工夫された点、実は現場に行ってちょっと困ったということがあれば教えてください。


ショパン
導入に関しては、既存のワークフローにうまくフィットできるようにしようと思っており、既存のビューワーでちゃんと結果を表示できるよう、施設一つ一つで調整しながら進めきました。理想としては、どのビューワーでも結合できるという目標がありましたが、実際には一つ一つの施設とインテグレーションを進め、さらに表示の工夫をしたり、フィードバックをいただいて製品に反映するということを繰り返しています。

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