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RSNA(北米放射線学会)2019。 “AI Showcace”から見えた医療画像AIの最前線。

Yuki Shimahara
Dec 9 2019

2019年11月30日〜12月5日に米国シカゴにて世界最大の放射線学会であるRSNA(北米放射線学会)の年会が催された。RSNAの年会は約5万人が参加する世界最大級のアカデミックカンファレンスである。企業展示エリアでは毎年CT, MRI, PACSベンダーなどが巨大なブース出展をしている中、今年はAIに特化した展示エリア「AI showcase」がホールとして独立するほど拡大し、AIに関する約130の団体・企業が展示を行った。同エリアの設立初年の2017年には約40社、翌年2018年には80社近くが展示し、2019年はエリア面積が2018年の3倍近くに増えたことからも、急激に拡大していることがわかる。私たちが設立したLPIXELは、同エリアができた最初の年から3年連続出展しており、このムーブの第一線で感じてきた。ここでは、同エリアの毎年の変化から見える医療画像AIの最新動向と今後についての私見を簡単にまとめてみようと思う。

AI Showcase. 毎年拡大するAIエリア

「Machine Learning Showcace」として、AI専用の展示エリアが設けられたのは2017年のことである。RSNAに連続出展する場合、年会期間中に翌年のブース予約をすることになるのだが、2018年会中にに我々が2019年会の予約をしようとした頃にはほとんどエリアが空いていなくて困惑していたのを覚えている。きっと、運営側も想定以上の状況に対応した結果、新たにホールを独立させるということにしたのだろう。また、「Machine Learning Showcace」から「AI Showcase」への変化は文字の意味どおり「技術」から「技術と機能」への変化ということで、いよいよ機能への期待が高まってきたということだろうか。今回はエリアが拡大しただけではなく、「RSNA Deep Learning Lab」という教育セッションブースで毎日のように大学の講義のようなものが行われており、その他「AI Hands-on workshop」も行われ、機能面でも進化を見せている。

LPIXEL社のブース。これ以上のスペースをもつAIブースが30以上あった。

明確に分かれてきた4種のプレイヤータイプ

130社も展示していれば、全てが同じようなことに取り組むわけにもいかず、自然とそうならないものである。今年は特に、数が増えたことでそれぞれ特徴の違いが顕著に現れ、大きく以下のように4つに分かれてきたと考えている。

(1)CADベンダー

いわゆるAIとしてイメージが湧きやすいのが「CAD(computer-aided diagnosis)」ではないだろうか。病変の候補点にハイライトしたり、病変の識別などをして画像診断を支援するようなものである。130社の中でも、大半がこのCADベンダーであり、LPIXELもそのうちの一社である。他にも、AI showcaceのスポンサーであるイスラエルのZebra medical vision、近年のディープラーニングブーム以降からのこの領域のパイオニアとも呼べる米国のENLITIC、中央に大きなブースを設けていた韓国のLunit、VUNOもこの部類に入る。

LPIXEL社の製品「EIRL Aneurysm」CADのイメージ図

(2)プラットフォーマー

例えば機能が細分化された100のAIを医療機関が導入しようとした場合、100社からのサーバーなどを院内に個別に導入して管理することは現実的だろうか。当然、非現実的である。iPhoneにはAppStore、AndroidにはGoogle Playがあるように、医療AIにもプラットフォーマーが必要になると予想される。AIの各ベンダーを束ねて、医療機関にプラットフォームとして導入しようとしているプレイヤーが、今回は10社近く展示していた。例えば最近、ワークステーションベンダーであるTeraRecon社に買収されたEnvoyAIはその先駆けの印象がある。イギリスのBlackfoldも存在感があり、750+の施設が導入してると発表していた。今年の一つの驚きとして、米国のARTREYSというAIを開発し、クラウドで提供していたベンダーが、今年の展示ではプラットフォーマーとしてもアピールしており、パートナー企業を募集していたことである。同社は自身でいくつかのAIも開発して販売し、それらをCloudで提供する傍、他のAIも導入できるシステムにすることで、アプリベンダーからクラウドプラットフォーマーへの変化を遂げている。他にもインドのCaringという会社は、各AIの閾値の調整をプラットフォーム上でできたり、研究開発ツールもあるというユニークなものだった。また、プラットフォームといえば、既存のPACSやモダリティベンダーが強くなって然るべき領域であり、GEはEdison Developer Programをオープンに提供している。また、IBMもその座を狙っており、現在は5社がパートナーだという。

ARTERYSのHPより

(3)インフラベンダー

鉱山を掘る人もいれば、彼らにツルハシやジーンズを渡す人もいるのと同様、AIのベンダーにツールを渡すプレイヤーも多い。NVIDIAは深層学習には必須になりつつあるGPUを提供することでイメージが湧きやすいだろう。また、クラウド上で画像を管理・解析することもあるため、そこを標準にGoogle、aws、Microsoftも展示を行なっていた。また、少し経路は異なるが、AIを開発しようとすると、データ収集や法規制対応など、いわゆる開発業務意外でつまずくことも多く、そういう部分をコンサル・サポートするCura Cloudという企業の展示もなされていた。

CuraCloudのHPより

(4)ワークフロー改善ベンダー

最後に、ワークフロー改善型のAIベンダーもある。例えばHeartVistaは、MRIの撮像に関わる業務を効率化するようなものである。同社曰く、MRIの撮像によっては300回くらいクリックしなくてはならないようなことがあり、それをある程度自動化することで作業効率が向上するとのことである。また、他にもレポートの自動作成機能をもつ企業もあるが、これは既存のモダリティ・ビューワー・PACSベンダーなどが既存事業の延長線上で取り組みやすい領域であり、ベンチャーからの参入企業は少ないように思う。

HeartVistaのHPより

やるべきはAIの多様化?それとも深化?

医療画像AIと一言で言っても、たくさんのテーマがある、部位・モダリティ・疾患・目的別にAIを開発しようとすれば、無限通りのAIが開発しうるのではないだろうか。その時にベンダーが直面する課題は、限られたリソースの中で「いくつのAIを開発しよう」「一つのAIをどこまで進化させよう」ということである。技術的には、AIの開発には終わりがない。臨床的な課題も溢れる一方である。そこでAIベンダーは複数・多様なのAIを展開するベンダーと、少ない領域に絞って深化に集中するベンダーに分かれているように思う。例えばマンモグラフィーのAIの老舗であるアメリカのベンチャーiCADは乳がんに特化している。また、韓国のLunit社もマンモグラフィーと肺のX-rayの二つに注力しており、RSNAの乳がんのセッションではLunitに関連する演題が目立った。一方、同じ韓国のベンチャーであるVUNO社はX-rayの肺・骨、肺CT、目、病理、歯科と多様なAIを開発している。どこまで多様化させるか、多様化させる領域をどうするか、それぞれをどこまで深めるかは事業戦略上非常に重要かつ難しい決断になるが、多様化を図る企業と深化を図る企業の姿勢は分かれてきているように思う。

「日本は大丈夫?」存在感増すアジア勢。プラットフォーマーは欧米勢。

AI Showcaceにおいて、一番目立っていて、誰もがびっくりしていたのは韓国のベンチャー企業だろう。ざっと数えても10社以上ある。3年前にRSNAに初出展していたLunit(ソウル・従業員数約90名)は中央の一番目立つ位置にエリア最大級の大きなブースを構え、学会にも約10の演題に関わっていた。Vuno(ソウル・従業員数約90名)もLunitに対抗するかのように同じ大きさのブースを対面に構えていた。その他、DEEP NOID、JLK Inspection、AIRSなど、それぞれ広いブースエリアで多くのAIを展示しており、他にも「韓国エリア」も設けられるなど、行政のバックアップがあることも感じられた。聞くところによると、ソウルは一つ一つの医療機関が日本と比較して大きく、それぞれがベンチャーにオープンにデータを提供している結果、韓国では教師データが豊富に扱える環境であるようだ。他には、Infervision(北京・従業員数約300名)などの中国企業、Zebra medical vision(Shefayim・従業員数約75名)・aidocなどのイスラエル企業、その他多くの欧米企業などがブースを構え、それぞれのAIを展示していた。その中で日本のベンチャー企業はLPIXELのみである。日本はCT/MRIの高度な撮像機器の導入率が世界で圧倒的に1位で医療画像市場が大きいあることを考えると、1社しかないのは異常と言える状況ではないだろうか。他のCT、MRI、PACSなどの展示エリアでは日本企業が目立ち、一般的に日本は「技術の国」と思われている一方で、AI showcaseになると「なんで日本企業は少ないの?」と私に何度も聞かれることがあった。ここで良い答えはできないが、日本の医療のためにも、手前の利益だけでなく、できることに注力していきたいと思う。

RSNA2020は米国市場のシェア獲得が差別化に。

1年前にRSNAに参加した時は、2019年のAI企業は米国やその他の市場のシェアをどれだけ取っているかが他企業との差別化になると思っていたが、どうやらそれは2020年のRSNAになりそうだ。まずは十分な社員数を抱え、いいAIを作り、法規制対応ができているだけで今年はまだ目立つことができていた印象だ。ただ、これからはもっと激しい競争が待っている。様々なAIがこの1年でFDA(米国)により医療機器の承認・認可を得て、各企業は販売を本格化させていく。そこで、各領域のAIが少しずつマーケットシェアを獲得しながら、製品開発にフィードバックしていく正のフィードバックループを回す企業が多く出てくる。そうすると、おそらく来年のRSNAではどの企業がどの領域で競争力がありそうかが予想されるようになり、その次の2021年ごろには今の130社すべてがイキイキとしていることはなく、勝者と敗者が明確になり徐々に淘汰が始まっていくだろう。2020年は各企業にとって、いいAIをつくり法規制対応をすることは当たり前で、どのように市場シェアをとるかが重要な年になるように思う。

2020年には米国を中心ににAIソフトウェアが拡散。日本は202X年

医療AI市場として、最大市場になると言われているのはアメリカである。とあるレポートによると、その次に中国、日本と続くようだ。当然、世界中の企業はまずは米国市場を目指し、そのあと中国、日本、ヨーロッパなどの市場を順に狙ってくる。しかし、数年で全世界のシェアを一気に取れるほどのスピード感はどの企業も達成し得ないだろう。ITサービスは基本的にすぐにグローバルに拡散するが、医療機器となると各国の診断基準の違いを考慮した開発を行い、国ごとに法規制対応、販売・保守業務を行わなくてはならない。法規制対応だけでも、米国と比べると1~2年の遅延は避けられないだろう。AIは米国で製品として磨かれ、その他各国の市場にローカライズして市場にやってくる。今年のRSNAで展示された多くのAIは、2020年は米国における市場競争が起こる一方で、日本には2020年後半から徐々にやってきて、2021年から本格化していくと考えている。気付いたら身の回りのITサービスが外国製のものに埋め尽くされているのと同じようなことが、医療でも起きるかもしれない。そもそも日本は医療機器において輸入超過なので、その方が自然なのかもしれない。しかし、個人的には医療画像AIは日本が世界でもリードし、結果として世界中の医療をより良いものにできるポテンシャルはあるとおもう。なぜなら、日本は医療画像大国でありつつ、診断あたりの放射線画像診断専門医の数が世界と比較して圧倒的に少ない課題先進国であるにもかかわらず、診断の質は高い国だからだ。データの質は高いので、あとはデータを活用しやすく、AIの導入が進みやすい国になれば、日本がこの業界を引っ張っていくことは、まだ可能性として残っているのではないかと思う。ただし、それは非常に楽観的な見方と言わざるを得ないRSNAの状況に、個人的には非常に気が引き締まった1週間であった。私も非常に多くの刺激をもらい、反省をした一週間でもあった。早速、今からできることに取り掛かりたい。

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